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  • 第五十七景

パリを愛した天才画家は
北区・中津の生まれ

佐伯祐三 生誕の地
大阪市北区 中津2-5-4 光徳寺内

人々を魅了し続ける名作がついに北区で……

大正・昭和初期の洋画家・佐伯祐三は中津の生まれ。独特なタッチでパリの風景を描き、30歳という若さで生涯を閉じながらも数多くの名作を残した。2022年2月2日に、大阪市に寄贈された佐伯祐三作品をはじめとする大阪中之島美術館が開館。人々の心を揺さぶる名作の数々が北区で観賞できるようになった。

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短くも激しい天才画家の生涯

 佐伯祐三は1898(明治31)年、中津にある光徳寺の次男として誕生した。17歳頃から油絵をはじめ才能を発揮。現在の東京藝術大学を卒業後の1923(大正12)年末にパリに渡る。
 そこで野獣派のヴラマンク(1876~1958)に「アカデミック!」と批判され、印象派風の穏やかだった画風が一変。パリの街角風景を重厚なタッチで描く独自の作風を確立した。
 一時帰国ののち再び渡仏。鮮やかな色使いと繊細な線描で街角のポスターやカフェなどを描いた名作を次々に生み出したが、次第に持病が悪化。愛するパリで30年の短すぎる生涯を終えた。第一次パリ時代以降の創作活動はわずか4年余り。どの作品にも生命を削るかのように注ぎ込まれた激しい情熱が感じられる。

生家である光徳寺内にある記念碑

佐伯祐三の名作が中之島で動き出す

 2022年2月2日にオープンした大阪中之島美術館。約40年前に実業家であり美術収集家であった山本發次郎(はつじろう)のコレクションが大阪市に寄贈されたことが誕生のきっかけとなった。山本發次郎が熱心に収集した作品を中心に、日本最大級59点の佐伯作品を所蔵している。

佐伯祐三「郵便配達夫」(1928年/大阪中之島美術館蔵)

代表作のひとつ。1928(昭和3)年3月、すでに床に伏せる日が続いていた佐伯が、偶然訪ねてきた白ひげの郵便配達夫を躍動感あふれるタッチで描いた

モデルの郵便配達夫はそのとき限り、一期一会の出会いだった

佐伯祐三「煉瓦焼」(1928年/大阪中之島美術館蔵)

山本發次郎が衝撃的な出会いを果たした最初の佐伯作品の一つ。パリでの創作に満足できず、田舎の素朴さを求めて滞在したパリ近郊のモラン村で描いたもの。煉瓦焼場の建物が神秘的な輝きを放つ

現地の寒さは画家の体力を奪っていったが、力強く太い線と構築的な構図が復活