いにしえの時代を知れば
露天神社はもっとおもしろい
恋人の聖地として知られる梅田・曽根崎の総鎮守。この界隈はかつて大阪湾に浮かぶ孤島だった。ここにまつられていた日本最古の祭典「難波八十島祭(なにわやそしままつり)」旧跡の一つ「住吉須牟地曽根神社(すみよしすみちそねじんじゃ)」が起源。人々を惹きつけて止まない理由は、実は「恋愛」だけではなかったのである。
日常生活全方位にご利益!?
街なかの最強パワースポット
縁結びで人気が高いお初天神。しかし、ご祭神に少彦名大神、大己貴大神、天照皇大神。豊受姫大神、菅原道真公を祀り、病気平癒、商売繁盛、学問など、あらゆるご神徳を持つことから、実はほぼ全ての願いにご利益がある最強パワースポットなのである。
“恋の手本”とされた
切ない物語『曽根崎心中』
醤油屋の手代徳兵衛は、堂島新地の遊女・お初と恋仲だった。ところが持ち帰られた縁談を断ったところ、主人を怒らせてしまうことに。さらに主人に返すべき大切なお金を友人に騙し取られて生きる術をなくし、露天神の森の木にお互いを縛って心中してしまう……。
1703(元禄16)年、実際に露天神社の境内で起きた心中事件をモデルに近松門左衛門が人形浄瑠璃として作品化したところ空前の大ヒット。涙を誘う二人の純愛は”恋の手本”とされ、そのヒロインの名前「お初」にちなんで「お初天神」と呼ばれるようになった。
これまでに三度ブレイクしたお初天神
最初のブレイクは「曽根崎心中」が初演された1703(元禄16)年。人気を博したものの、永遠の愛を誓う心中事件があちこちで発生。困った幕府は1722(亨保7)年。ついに心中物の上演を禁止した。
その後、250年の時を経て、1953(昭和28)年に歌舞伎で復活。その時のお初が、生涯をかけて上方歌舞伎を追求した坂田藤十郎さん(当時は二代目中村扇雀)です。お初が徳兵衛の手を引く形で先に花道を引っ込むという、それまでの立役(男役)から一歩下がる女役の常識を打ち破った演出が話題になり、一躍ブームに。自らの意思で男性をリードする姿は、社会進出を果たしていく当時の女性たちの共感を得た。翌々年には人形浄瑠璃も再演され、上方文楽に江戸の名作が舞い戻った。今日では「恋人の聖地」として若者に人気を集め、縁結びのご利益がある絵馬やお守りも豊富だ。
こちらも女性に人気!
開運稲荷神社
お初と徳兵衛のブロンズ像のすぐ近くに鎮座する「開運稲荷神社」は、美肌祈願と美人祈願ができると女性に話題。ご祭神は、玉津大神、天信大神、融通大神、磯島大神の4柱で、1909(明治42)年「北の大火」によって付近に祀られていた稲荷社を、翌年に露天神社の境内に合祀したのが始まり。かつては皮膚病の治癒を願って、なまずの絵馬がたくさん掛けられていたとか。